元禄15年(1702年)から宝永元年(1704年)にかけて成立したと見られる、向井去来の著書「去来抄」。松尾芭蕉の高弟であった去来による俳論となっており、蕉風俳論の最も重要な文献であるとされる。芭蕉研究においては、決して欠かすことの出来ない書物である。 上中下の三部構成であり、それぞれ「先師評」「同門評」「修行教」となる。
芭蕉の翁、ひとたびこの道に斧ふりして、屈るをうち、曲れるをおし、俳諧の真こころを伝へてより、風の草をおし均して、一派八隅にかかり、支流湧がごとく、終に川木ひろふわらはも、菜摘女も、耳にふれ口に出るの時、風調はじめて泥土にくだり、意を横さまに穿て風體を折き、惑説十襲して、今時平地に波瀾を起す、其弊を撓むには、いそしき哉去来、うべなる哉此抄、浅く漁て呑舟の魚をもらす事なかれと也 安永三年甲午十月 暁台
安永三年 ⇒ 1774年 暁台 ⇒ 久村暁台 去来抄は、安永4年(1775年)に板行され流布した。去来が没して71年後、芭蕉が没して81年後のことである。